森薗政崇×尾崎社長 対談インタビュー
先日1月28日におこなわれた2023年全日本卓球選手権大会 男子ダブルス。
熱戦の末、見事優勝されたボブソン所属の森薗政崇選手が優勝報告に来てくれました。
そこで今回は急遽 弊社尾崎社長との対談が実現。
話題は近況報告から始まり、インタビュアーからの質問も交えつつ、お互いの会社経営についての熱い話も。
和やかな雰囲気の中、終始それぞれの卓球愛が溢れた対談となりました。
こちらのblogでは怪我から復帰までの道のりと、お二人の経営観を中心にお送りいたします。
とにかく早く復帰したかったし、出来ると思ってました(森薗)
尾崎社長(以下、尾崎):まずは全日本男子ダブルス優勝おめでとうございます。
森薗政崇(以下、森薗):ありがとうございます!おかげさまで優勝することができました。
尾崎:今回怪我もあって心配してたんですけど、大会まではどんな感じで動いてたんですか?
森薗:手術をしたのが10/31で、それから約2か月半で手術をして回復をして、試合をしないといけない状態だったんです。リハビリの先生には「8週間は本気の動きはしちゃダメ」って言われてて。でも手術の前にリハビリの先生と執刀医の方に「なるべく早く復帰したい」っていうのを伝えて、全身麻酔ではなくブロック注射と局所麻酔でなるべく身体に負担が少ない方法をとりました。
尾崎:手術は痛くなかった?
森薗:麻酔を打つときは本当に痛かったです。術後は麻酔効いてる間は「全然余裕じゃん」と思ってたんですけど、麻酔が切れると無茶苦茶痛くて。その夜はアイシングしながら過ごしました。
尾崎:具体的にどんな怪我だったの?
森薗:前シーズン2月の試合なんですけど、その日はすごく動けて調子もよくて。途中でバンッと強く床を踏んだときに違和感があったんですが、そこから痛みが続くようになったんです。いわゆる「ネズミ」って言われるんですけど、関節の間に欠けた骨が挟まるっていう状態なんですよ。僕の場合は、膝近辺の欠けた骨が左足首まで降りて関節に挟まっちゃって、そのまま靭帯に癒着してしまったんです。日常生活だと階段降りるときに若干痛いくらいなんですけど、卓球だと足を蹴って戻ってくる動きがすごく痛いのと怖いのとで、満足いくプレイが出来ないので取ってしまおうって感じでした。
尾崎:それは他の卓球選手にも多い?
森薗:執刀医の人に聞いたらサッカーやバレリーナなど足首を伸ばす動きの人に多いらしくて、卓球選手では初めて診たと言われました。僕はフォアを打つときに足をグッと伸ばすようにして打つんですけど、その動きが負担だったみたいです。
尾崎:張本選手とは怪我について話したりした?
森薗:しましたしました。でもペアだしあんまり心配もかけたくなくて。多分結局「手術する」って伝えてなかったと思うんですよね。復帰するっていう強い意志もあったので人知れず(手術を)やって、事後報告してって感じでした。
尾崎:なるほど。手術から全日本まではかなり短い期間だったけど、感覚として調子はどのくらいまで戻ってたのかな。
森薗:ギリギリでしたけど、全日本直前に試合したときには「そういえば手術したな」と思えるくらいには戻ってましたね。
尾崎:一昨年はシングルスで準優勝で、今回男子ダブルスは8年ぶりだったのかな?8年って単純に結構、、、長いよね(笑)。
森薗:長かったです(笑)。そう考えると(全日本男子)ダブルスの優勝は大学1年の時が最後なんですよ。混合ダブルスに集中して4年間出なかった時期もありましたから。でもこれでボブソン所属として日本一を取ることが出来て良かったです(苦笑)。
尾崎:本当に有難いよね。所属して4年間でここまで結果出してもらって。
https://twitter.com/MasaMezase/status/1619272909905883136
苦難の末に優勝を勝ち取った森薗・張本ペア(森薗選手のTwitterより)
当たり前のことを当たり前にやるために手を抜かない(森薗)
ーー怪我を乗り越えた先に見事掴んだ勝利だったんですね。ここからは質問も交えつつ、お話を聞いていければと思います。まずはいつものプレーで心がけてることがあれば教えてください。
森薗:めちゃくちゃシンプルなんですけど、手を抜かないということですね。全日本決勝でも、地区大会1回戦でも、全部同じテンションで試合することを心がけています。
ーーいろんな試合がある中で「この試合は体力温存しよう」というのはない?
森薗:ありますあります。何なら棄権して出ないとかもあるんで。それ自体は戦略の一つなので全然アリなんですけど、(試合するときは)どの試合もテンションを同じにしておかないと、いつ自分の状態が良くて勝ち上がれるのかが分からなくなるんです。Tリーグだと、シーズン通しての試合で勝ったり負けたりする中で、モチベーションを保つのがすごく難しいんですよ。負けが込むと落ち込んだり、「もう出たくない」ってなる選手もいますし。そういう風にならないようにいつもマックスで普段通りが出来るようにってのは心がけてます。
ーー確かにいつも熱量の高いプレーをされていますもんね。森薗さんといえば気迫のある熱いプレーが特徴的ですが、その熱量は「ファンに応える」というようなものもあったりするんでしょうか?
森薗:そうですね。やっぱりドイツの経験が大きくて。中学1年生の時から向こうのリーグに半年ずつ参戦させてもらってたんですが、1部から13部まであるんですよ。僕は4部からのスタートだったんですが、4部って昔上手かった60代のおじさんとかも全然いるんです。その中で混じって試合するんですけど、当然観客は一人もいなくて。しかも同世代の子達はそのとき国際大会とか出てるんですよね。それを映像で見つつ、一方で僕はビール片手間に飲みながらやってるようなおじさん達と試合するっていう(笑)。
尾崎:それもまたすごいね。
森薗:もうすっごい悔しかったんです。人に見られないってこんなに苦しいことなんだなと。初めて1部に上がって、沢山の人に自分を見てもらえたときはすごく嬉しかったですね。そこから人に見られるような試合をするのが自分のコンセプトにもなっています。
大事なのは自然に活躍できる場をつくること(尾崎)
ーー少し話題は変わりますが、尾崎社長の方針でボブソンのデニムのサイズ展開もなるべく広く、沢山の人に届けられるようになっていますよね。スポーツとアパレルの違いはあれど、森薗選手の「沢山の人に見てもらう」コンセプトは、尾崎社長の経営にも何か繋がっているような気がしますね。
森薗:僕も気になります。実際、卓球とアパレルの経営で通ずる部分っていうのは多いんでしょうか?
尾崎:う〜ん。まあ組織っていうものは、例えば会社だろうとスポーツの団体でも、基本的な部分で大事なのは達成感であったり楽しさであったりで、そういうものがないと続いていかない。一度しかない人生だから自分のやりたいことをやっていくべきだし、会社としても、なるべくそういう場を作ってあげたいと思っています。スポーツ選手も、個人でもあるけどある意味で団体戦でもありますよね。そういう部分で会社と同じようなものだと思っていて。結果が中々出ないこともあるし、景気やトレンドの変化で突然売れ始めるようなこともある。今の時代はそんな簡単に売れたりはしないから、ひとつひとつクオリティを積み重ねていくしかないんです。「手を抜かない」というのは私達にとっても大事なことですね。
森薗:個人であり団体戦っていうのはめちゃくちゃ分かりますね。リーグとかやってるとまさにそうで。会社のように個々で頑張りつつ、それが集合して力になるというか。
尾崎:組織を運営する人間としては、働く人達がそれぞれ自然に力を出せるような環境づくりが大事だと思います。個々にある程度任せて、それぞれが自然な形で活躍できるのならそれが一番良いですよね。そのことを忘れてしまうと、会社がたとえ大きくなっても誰も幸せにならない。一人がもの凄く儲けても仕方ないですから。
森薗:なんか、、、監督みたいっすね、、、
(一同笑)
森薗:いやでも本当に。監督って僕ら選手が活躍できるような環境作りとか、マネジメントの要素がかなり大きいんですよ。今の話聞いてると、尾崎さんそのうちチームの監督とかやりそうだなって。 数年後、普通にジャージ着てベンチに座ってるかもしれないですよ(笑)。
尾崎:それも楽しいだろうね(笑)。
ーー社長は従業員個々の成長機会をつくることを大事にされてますよね。社内でも週に必ず数時間は他分野の勉強会の時間を取っています。森薗さんへのサポートもそうですが、その辺りの人への投資についてはどう考えられていますか?
尾崎:まあ投資というか、その人が成長することが一番だと思っていますから。勉強の機会もそれがあること自体が大事だと思いますし、これだけ時代が変わっている中ですからやっぱり自分達も学んでいかないといけません。それは専門的なことだったりもっと包括的なことかもしれませんが、人として成長することが結果的に会社の成長にも繋がっていく。逆に会社を飛び出していったとしても、どこでもやっていけるような技量を身に付けさせることが出来るのなら、会社としてもプラスになると思うんです。
社長業は毎日の積み重ね。あんまり面白くないよ(笑)。(尾崎)
ーー森薗選手は国を代表する選手として、尾崎社長は会社の経営者として様々な経験をされてきたと思います。中でもお二人にとってそれぞれ一番苦しかったことがあれば教えてください。
森薗:試合でいうと一昨年の全日本シングルスの逆転負けですね。社長から終わった後にすぐに「今は電話はええから」って労いのLIMEをもらったんです。でもその時は人の声が聞きたくてどうしようもなかったのですぐに電話して。「ダメでした」と伝えたら「今はゆっくり休んだらいい」と気遣って頂きました。あの逆転負けは結構自分の中では衝撃的だったので、印象に残ってますね。
尾崎:う〜ん、私はやっぱり社長になったときかな。社長になってから1〜2年は大変でしたね。それまで社長業はおろか、取締役もやったことなかったのにいきなり社長になって会社のすべてを運営するようになって。本当に失敗を繰り返しながらの10年だったなあとは思います。
森薗:苦しい時期に一番最初に何するとかあります?
尾崎:苦しいときはね、苦しいって考えることができない。それぐらい厳しかったですね。会社が苦しくなると、その月その日とどんどん思考の射程が短くなってしまう。資金繰りとか特にね。余裕が出てくれば、1年後、3年後、10年後のことを考えられるようになる。結局、社長業って先のことを考えるために、如何に今の時点のことを考えることがないような経営をするか、ということなんです。あんまり面白くないですね(笑)。
尾崎:そういう意味でいうと森薗さんは選手でありながら会社(FPC株式会社)も経営されてますよね。選手と経営者両方の目線をお持ちだと思うんですけど、森薗さんが経営について色々考えてることってあります?
森薗:まだ苦しい時期が来てないからかもですけど、今のところすごく楽しいですね。元々一つのことに囚われて視野が狭まってしまうタイプなんですけど、会社を経営することで視野が自然に広がりました。結果的に卓球にも良い影響が出ていて、僕にとってはすごくプラスになっています。組織が大きくなるほど考えることも増えますし、今後大変になってくるんだろうなと思いますね。
ーー逆にお二人が一番嬉しかったこと、テンションが上がったことはなんでしょう?
森薗:なんですかね、、 さっきの会社関連でいえば、ウチは小売業が強いんですけど、単純にモノが沢山売れるとめちゃくちゃ嬉しいですね。特にお客様から感謝の連絡みたいなのを頂くときがあって。ただの通販なのに「発送早かったね」とか「ありがとう」とかメールもらえたりするのは有難いです。人が好きっていうのもあって、選手のときとはまた違う、対面での関わる感じも新鮮で楽しいです。
尾崎:私は、、、、ないかな、、、(笑)。こういう言い方は変かもしれないけど、毎日が淡々と過ぎていくって感じなんです。大きな狂いが無いように調整していて、そこに特別な楽しさや刺激があるかっていうと、そういうわけじゃない。とにかく毎日の積み重ねですよね。営業マンだった頃は大きな仕事を取ってくると「やった!」と思うことはあったけど、社長業はそうではないからね。
森薗:それだけ計算尽くなんでしょうね。自分の考えたことを実現するために必要なものを把握出来ているというか。
尾崎:ファジーな部分も結構多いですよ。ただ曖昧な部分も長くやっていればそれなりに見えてくる部分もあります。ただ、全体像の理想はあるけど、個々の動きや考え方は分からない。だから面白いんだと思うし、それで一応上手くいってると思ってますから。
まだまだ変われるし、もっともっと強くなれると思ってるんですよ(森薗)
ーー森薗選手は選手キャリアの間という早い段階で会社を立ち上げられましたよね。大会を開いたりと卓球界への尽力も積極的にされているイメージですが、恩返しのような意味合いもあったりするんですか?
森薗:僕はまだまだ自分が戦うぞという気持ちが強くて、今は尾崎社長のように人に何か与えたりは出来てないと思っています。ただ卓球選手って引退した後に何もないんですよ。メーカーに行くか、コーチになるか、自分で卓球場やるかっていう感じで。勿論どれも素晴らしいお仕事なんですけど、選択肢が限られるのがなんだか寂しいなと思ったんですよね。出来るならこれまで一緒に苦難を共にした仲間達となにかしたいなと。それをするためにはもちろん仕事や金銭的な体力が必要なので、今後も見据えて今の会社をやっています。
ーー森薗さんが意識されてなくとも、新たな場づくりを始めることは卓球界にとってプラスになっていくと思いますよ。
森薗:そうなるといいですよね。やっぱり人が好き、仲間を大切にっていうのが根底にあるんです。本当は日本国民全員に何かしてあげられるならそれが一番良いんですけど(笑)。それは難しいので、なるべく手の届く範囲の人たちと一緒に幸せになっていけたらな、と思っています。
ーー本日は卓球の話題だけでなく、お二人の経営観について熱い話が聞けて嬉しいです。最後に今後の展望について聞かせてください。
森薗:27歳になって、卓球業界だとベテランって呼ばれる年齢になってきたんですけど、自分では全くそんな風に思ってはなくて。これからももっと自分の卓球も変えていくし、もっと強くなっていきたいと思ってます。僕の父も卓球をやってて、60歳で全国大会目指して練習してるんですが、その姿にすごく憧れるんですよ。代表選手としてはあと何年出来るかは分からないですけど、卓球は生涯スポーツとして最後までやり切りたいなと思っています。
尾崎:卓球には色んな形で今後も関わっていきたいです。とはいえ私はジーンズメーカーなので、ジーンズ自体も同じように成長させていければと思っています。卓球とジーンズでは道が違いますけど、両立出来ないことではないと思うし、相乗効果も作っていければと思ってます。これからもこれまで通りモヤモヤしながら経営していくだけですね。
森薗:ジーンズとスポーツってなかなか交わらせるのが難しいことだとは思うんですけど、水と油を上手く混ぜるための作業がこれから待ってるってことですね。
尾崎:両方とも中途半端でなく職人気質のものを作っていこうと考えてるから、尚更難しいところはあるんだけどね。
まだまだこれからだと思うし、森薗さんとも互いに刺激し合えるような関係でいられればと思っています。
森薗:少しでも近づけるように頑張ります!これからも色々勉強させてください。逆に卓球は僕が教えますのでいつでも受けて立ちますよ!(笑)